What this article talks about
- AIが旅行商品の検索方法を変革する一方、予約には依然として高い精度、構造化されたデータ、リアルタイムの正確性が求められる理由
- レガシーシステム、確率的なAIの出力、そして複雑な予約・手配プロセスによる、旅行の検索、提案と実際の予約の間にギャップが存在し続ける理由
- 迅速なプロダクト提供と、プラットフォームに直接組み込まれたAI機能が、顧客体験とビジネス成果をどのように向上させるのか
トラベルポートの最高技術責任者(CTO)Andrew Jordan氏が語る、AIによる旅行商品の検索方法の進化が、必ずしも予約につながるとは限らない理由
ソーシャルメディア上のコミュニティ主導型検索が新たな需要を生み出し、無数の選択肢が瞬時に提示される今、AIは旅行業界の姿を大きく変えつつあります。
しかし、その魅力的なショーウィンドウの裏側では、価格設定、空席・空室状況の管理、予約手配、コンプライアンス対応といった現実の複雑な課題に対応しながら、旅行者の希望に沿った選択を確実な予約へと変えることのできるプラットフォームが求められています。
ビジネスやレジャーを目的に世界中を移動する旅行者を支えることは、決して簡単なことではありません。トラベルポートは、「旅行をもっとシンプルにし、より多くの選択肢を提供しながら、負担や手間を減らす」というビジョンを掲げてきました。そして今、AIの進化はこのビジョンの実現を大きく加速させています。トラベルポートはAIを活用し、一人ひとりに理想にかなった選択肢を提供することで、その実現を後押ししていきます。トラベルポートの専門性とAIを融合させながら、旅行体験のさらなる進化を支援していきます。
ソーシャルメディアとアルゴリズムは、旅行先への関心や需要の形成に大きな影響を与えています。ユーザーの68%が、TikTokが旅行先や旅行商品の選択に役立っていると回答しており¹、さらにZ世代の旅行者の59%は、TikTokをきっかけに実際に旅行を予約したと回答しています²。
こうした数字は今後さらに増えていくでしょう。
旅行者はますます、AIが自分の意図を理解し、選択肢を絞り込み、それぞれのメリットとデメリットを説明し、旅の着想から予約までのプロセスを加速させることを期待するようになっています。
Statistaによると、2025年には世界の消費者の40%が、旅行計画のためにChatGPTのようなAIツールをすでに利用していました³。しかしその一方で、希望する旅行と実際の予約・購入との間には、依然として大きな隔たりが存在しています。

AI主導の旅の着想によって形成される旅行者の期待と、予約やサービス提供の面でそれを実現する旅行業界の能力との間には、依然としてギャップがあります。
Andrew Jordan(トラベルポート)
ここでは、完全に自動化できる「人が介在する必要のない取引」(AIが得意とする、顧客対応やシンプルな予約など)と「人が介在する必要のある取引」とを区別して考える必要があります。
オーダーメイド旅行やラグジュアリー旅行、複雑な旅程を伴う複数都市周遊など、専門の旅行会社によるきめ細かなサービスが求められる従来型の旅行スタイルへの需要は今後も引き続き存在するでしょう。
また、遅延や欠航といったトラブルが発生した際には、依然として人の介在が不可欠です。
検索方法は変わったが、予約方法は変わらない
そのギャップこそが、私たちがまさに解決しようとしている課題です。
AIは新たな発見の可能性を広げるが、実際に何を提供し、販売できるかを決めるのはインフラである。
Andrew Jordan(トラベルポート 最高技術責任者)
従来の旅行販売は、「どこへ行くか」「いつ行くか」「何人で行くか」といった目的地や在庫状況に基づいて構築されてきました。
しかしAIによってほぼ無限ともいえる選択肢が生まれた今、真の自由とパーソナライゼーションを実現する大きな可能性が広がっています。
AIは特に、予約前の段階(検索、計画、旅程作成)においてその力を発揮します。
一方で旅行者やその代理店は、その次のステップである予約と決済へ、迅速かつ確実に移行することを求めています。
現在のAIによる検索機能は、従来の空室状況ベースの予約システムと比べると、依然として精度が低く、ガバナンスも十分に行き届いていない状況にあります。
AIは確率論的な仕組みであり、出力は学習データに依存するため、不正確さや「ハルシネーション(もっともらしい誤情報)」を含む可能性があります。
これは旅行予約(特に決済や手配の領域)に求められる中核要件である「精度」と「確実性」とは対照的であり、誤った取引や無効な旅程、法人旅行におけるデューティ・オブ・ケア(安全配慮義務)といったリスクにもつながり得ます。
これまで旅行業界は、検索から予約へと適切につなげることに苦戦してきましたが、もちろん成功例も存在します。
トラベルポートの顧客であるSemboは、自然言語入力に基づいてホリデーパッケージを生成するアルゴリズムを活用しています。例えば「家族4人でフロリダに2週間、オーランドに到着し6つの目的地を巡るロードトリップ、予算はX」といったリクエストに対応します。
旅程が提示されると、即座に購入できるボタンが表示されます。 Semboはトラベルポートからリアルタイムの空席情報を取得しているため、その旅程は完全に即時予約可能であり、 単なる検索にとどまらず、そのまま予約完了へと進みます。
AIツールはすでに自然言語からパーソナライズされた提案を生成できますが、旅行業界のシステムは、こうした複雑でオープンエンドなクエリを大規模に処理する前提では設計されていません。
XMLやJSONといった従来の技術標準は、最新の機械可読システムと比べて効率性の面で制約があります。
AI主導の旅行販売には、より効率的なクエリ処理、データ処理の高度化、不要な組み合わせの削減、そしてインテリジェントなコンテンツキュレーションに支えられた、より関連性の高い検索結果が求められます。
こうした変化はすでに始まっています。
トラベルポートは最近、AI開発企業およびテクノロジーサービスプロバイダーであるコグニザント、そして「クロード」を開発したアンソロピックと提携し、推論・計画が可能なシステムと、現実世界で取引を実行できるプラットフォームを接続する取り組みを発表しました。
新たなAIトラベルエコシステムが形成されつつあります。
現時点では、規模、コスト、インフラが依然として大きな課題となります。AIには膨大な計算リソースが必要であり、それをいかにコスト効率よく提供するかが重要になります。
信頼性もまた障壁の一つですが、若い旅行者の間ではそれほど大きな問題ではありません。
G24の世界調査によると、18〜34歳の51%がAIを信頼している一方、35〜54歳では48%、55歳以上では38%にとどまります。
しかし、AIがメッセージングツールのように日常的で身近な存在として受け入れられるようになれば、信頼も今後高まっていくと考えられます。

変化に即したインフラの整備が不可欠
旅行プラットフォームには、取引の正確性、信頼性の高い空席・空室状況へのアクセス、コンプライアンス対応、そして遅延やキャンセルなどのトラブルへの対応能力が求められます。これらはAI単体では実現できない領域です。
トラベルポートの強みは、比類のない旅行データと豊富な業界経験に支えられ、レジャー・法人旅行の両領域において、こうした信頼性と確実性を大規模に提供できる点にあります。
AIを活用できる強固なプラットフォームは、複雑なリアルタイムの空席・空室データにアクセスし活用することを可能にし、多様なデータソースから複数の選択肢を組み合わせ、決済処理、発券、精算、コンプライアンス対応までを支援します。
一方で旅行事業者には、AIの普及によって変化する消費者行動に合わせて、文化・システム・業務プロセスを適応させていくことが一層求められます。これにより、旅の着想から予約までのシームレスな移行が実現されます。
そしてその実現を支える前提となるのが、適切なインフラです。
顧客の視点:マレーシア航空
「私たちは、AIが旅行者を支援し、業務効率を高める上で、ますます価値のあるツールになると考えています」と、マレーシア・アビエーション・グループの航空事業部門最高商務責任者(CCO)であるDersenish Aresandiran氏は語ります。「AIは高度にパーソナライズされた旅の提案を生み出すことができます。しかし重要なのは、それらを正確で、予約可能かつサービス提供可能な旅行プランに変えることができるかどうかです。」
同氏は、予約完了までのプロセスにおいて、トラベルポートのようなプラットフォームが極めて重要だと述べています。「AIによる検索体験と実際の予約・手配を結び付けるには、強固なインフラが不可欠です。これにより、価格設定の正確性と予約の簡便性が確保され、あらゆるチャネルにわたるエンドツーエンドのサービス提供が可能になります。」
AIが真の価値を発揮するのは、適切な管理やサービス品質を損なうことなく効率性を高められる場合に限られます。」 マレーシア航空にとってAIは、運航の信頼性を支え、コスト規律を徹底し、混乱時の対応、再予約、払い戻しといった重要分野を管理するとともに、パーソナライゼーションをさらに高度化する機会でもあります。
「私たちが提供する優れた顧客体験と旅行体験の中心には、常に人の温かさがあります。心のこもったおもてなしや親しみやすい笑顔、そしてきめ細かなサービスを、AIが代替することはできません。」
さらに同氏は、将来の旅行体験は人の専門性とインテリジェントなテクノロジーの強力な連携によって形作られると述べています。「AIと人が互いの強みを補完し合うことで、シームレスな体験と、より記憶に残る旅を実現できます。
実際、当社は現在でも航空券カウンターを運営している世界でも数少ない航空会社の一つであり、旅行者はパーソナライズされたサポートを直接受けることができます。
これは、お客様が必要とする時に、デジタルの利便性と人的サポートの両方を提供し続けるという当社の姿勢を示すものです。」
現在、AIは旅行の検索体験の支援、パーソナライゼーションの強化、そして効率向上において最も効果を発揮しています。しかし、最終的な取引を完了するためには、既存のシステムや人による確認が依然として不可欠です。
旅行の着想から予約に至るまでのプロセスは急速に進化しており、さらに高度なパーソナライゼーションや、AIと人が真に融合した体験の実現が近づいています。
トラベルポートは、スピード、コンテンツの標準化、そしてリアルタイム接続が重要となるAIファーストの流通環境において、その変革をリードしています。
当社は、スケーラブルなインテリジェントプラットフォームの提供、コンテンツ基盤の拡充、そして真にAI主導の体験の実現を通じて、これを推進しています。
これら3つの柱は一見シンプルに見えるかもしれません。しかし、その裏側では膨大な取り組みが行われています。その原動力となっているのが、当社の次なる成長ステージに向けた5,000万ドルの投資です。
旅行業界におけるAIの未来は、より主導的かつパーソナライズされた自動システムによって形作られていくでしょう。こうしたシステムは、ユーザーの負担を減らし、意思決定を支援し、複数のステップにわたるタスクをユーザーに代わって実行できるようになります。
Matias Undurraga(AWS)
パートナーの視点:Amazon Web Services
Amazon Web Services(AWS)のエンタープライズ・テクノロジストであるMatias Undurraga氏は、AIの活用により旅行業界は手動での検索からガイド付き意思決定へと移行しつつあり、システムがユーザーの意図を解釈し、選択肢を絞り込む役割を担うようになっていると述べています。
同氏はこの課題を、AIが提示する推奨内容と実際の予約実行との間に存在する重要なギャップであり、その背景には旅行業界の複雑性や構造的制約があると指摘しています。
インフラ、特にクラウドプラットフォームは、モデル、データ統合、オーケストレーション、セキュリティ、ガバナンス、監視を支えることで、AIの大規模展開を可能にします。
これによりシステムはプロトタイプ段階から本番環境へと移行し、実行可能なパーソナライズされた成果を提供できるようになります。
ウェブ、アプリ、コンタクトセンターといったすべての接点における一貫性は、信頼を構築し、統一された体験を実現するために不可欠です。「信頼性、正確性、一貫性は、これらのシステムの初期段階から組み込まれていなければなりません。」
なお、AI対応のTravelport+(ガリレオ/1G)プラットフォームはAmazon Bedrock上に構築されています。
参考文献
本ブログシリーズの第1回では、AIが旅行業界をどう変革しているのか、そしてAIを大規模に機能させるためのインフラ、プラットフォーム、専門知識を備えた企業こそが成功を収めるというテーマを探ります。
次回のブログでは、なぜリスクが高まるとAIは失速するのかについて考察します。
